今から2000年程前、お釈迦様の教えを説いたお経に出てくる言葉です。人間の生活規範が述べられています。六方とは人間関係のことで、これらを守れば良好な人間関係が築け、幸せに暮らせると説かれています。
現代人はコミュニケーションが下手になったと言われています。コンピューターの進化で何でも機械化が進み、またメールやラインで要件を済まして対面での会話が少なくなっています。その結果、いろんなトラブルが起こり、思わぬ事態が生じたりしています。みんなのお寺の来訪者でも人間関係での悩み事の相談が一番多いです。
お釈迦様存命の2500年前にはコミュニケーションは対面しかありませんでしたが、それでもお釈迦様はそれを非常に大事にされていました。その内容をかいつまんで書いておきます。参考になれば幸いです。
東方(親子関係)
―親は、わが子を罪悪から遠ざけ、善を行なわせ、技芸を学ばせ、ふさわしい妻をめとらせ、時が来たら 家督をゆずる。子は、養育してもらった両親を養い、家業に精を出し、家督を継ぎ、遺産を相続し、死者の霊を祀る。
南方(師弟関係)
―師は、正しく指導し、学んだことをしっかりと保持させ、すべての学問・技術を教え、友人や 朋友の間で誉め、あらゆる面で彼を守る。弟子は、師に礼をつくし、師のそばにあり、師に従い、給仕し、学問を学ぶ。
西方(夫婦関係)
―夫は、敬意をもって接し、礼儀をもって扱い、不倫を行なわず、権限を与え、身を飾る装身具を用意する。妻は、家事をよくし、親族を親切に扱い、貞操で、家の財産を守り、なすべき事を巧みに処理する。
北方(友人関係)
―分かち合う事と、やさしい言葉をかける事と、友につくす事と、協同する事と、あざむかない事。
下方(雇用関係)
―上司は、部下にその力に応じた仕事を与え、食料と給料を与え、病気の世話をし、珍味の食物を分け与え、時々休暇を与える。部下は、上司よりも早く出勤し、遅く退社し、与えられたものだけを受け取り、仕事を立派にこなし、上司の名誉になる事を人々に話す。
上方(宗教者と信者関係)
―宗教者は、信者を悪から遠ざけ、善に入らしめ、善い心で愛し、未だ聞かない事を教え、すでに聞いた事柄を正しく説明し、天界への道を 説き示す。信者は、宗教者を信じ、支え、協力を惜しまず、奉仕の精神を持ち、布施行を実践する。
十輪院 住職 橋本純信
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