南都 十輪院 奈良市十輪院町27 TEL.0742-26-6635

おしらせ

新住職ご挨拶

令和2年6月17日

謹啓

長きに亘り、十輪院をお支えくださっている檀信徒の皆様、大切な方へのご供養を通じてご縁を頂戴いたしました皆様、そして、現在、十輪院を必要としてくださる全ての皆様へご挨拶申し上げます。

日頃より当山の活動に多大なるご理解とご支援を賜り、誠に有難うございます。また、新型コロナウィルスの影響により、多くの方が不安を抱えて日々お過ごしになられていることとご拝察申し上げます。このような時代において住職を拝命し、その重責と与えられる使命について、日々、千思万考していく所存です。

中世において十輪院では、戦乱や自然災害を前に死と向かい合わせの人々によって、現世利益・後世善処の祈りが本尊地蔵菩薩に捧げられました。そこには、私たちが本来保つべき調和や、自然への畏敬の念を忘れないようにする為のお智慧が込められていました。

怪我や病気の痛みが、私たちに、からだが正常な状態にないことを教えてくれるように、人々の不調和によって私たちが感じる苦しみや悲しみ、そして悔恨の情は、私たちが本来、互いに愛し合い、互いに好意を尽くしあって生きてゆくべきものであること、そして何が正しいかを知り、それに基づいて自分の行動を自分で決定する力を持っていることを教えてくれます。

―正しく眼の無常を観察すべし。かくの如く観ずるをば是を正(しょう)見(けん)と名く―

お釈迦様が説かれた、思い通りにならない人生苦に対処する実践方法「八正道」の第一、「正見」は、万物の無常を認識し、目の前の幸福も難局もやがては過去のものになるという前提で、次の行動を正しく決定するためのお智慧です。

そして無常を前提とするならば、古のお智慧も、生活様式や人々の悩みの変化に応じて、翻訳されなければならないと思います。法事やお葬儀が、私たちにとって人として健全な心の状態を作り上げる最も大切なお智慧であることは変わりませんが、それ以外にも、仏教には現代においても実益のあるお智慧が沢山あります。僧侶はそれらを形骸化させず、必要とされる方にいつでも安心してお使いいただけるよう、生きたお智慧にしなければならないと思います。

今回のコロナ禍において、私たちはウィルスの恐ろしさは固より、人と人との不調和から生まれる悲しみと、インフォデミックによって真実が見えなくなる恐ろしさを経験しました。このような時に私たちが捧げるべき祈りは、一人でも多くの人を救おうと建設的で思いやりのある行動をとってくれている人々への感謝と、一人でも多くの人が恐れや怒りを離れて、現実的かつ明確に物事を見ることができるようにとの願いが込められたものだと思います。

当山本堂での毎朝の勤行はどなたでもご一緒にお勤めいただけるよう公開し、「みんなのお寺」では朝夕の勤行と傾聴活動を続けて参りましたが、緊急事態宣言が発出され、参拝者様の受入れを中止すべきか苦慮したのち、出来る限りの対策をして朝勤行の公開と「みんなのお寺(奈良)」での傾聴活動を続けました。そして今日現在まで、参拝者様が途絶えた日はありませんでした。

十輪院が今後も祈りの場として、必要としてくださる方のお気持ちに寄り添い、一人でも多くの方の気づきの一助となれますよう、そして私自身、時代に相応したお智慧の翻訳者となれるよう、精進してまいります。

何卒、ご指導・ご鞭撻を賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。  謹白


宗教法人十輪院 代表役員・住職 橋本昌大


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