南都 十輪院 奈良市十輪院町27 TEL.0742-26-6635

こころの便り

仏教はユニバーサリズム

令和元年7月2日

当山の法事や朝の勤行で皆さんとお唱えしているお経の中に「祈願文」があります。


その中に「万邦(ばんぽう)協和(きょうわ)諸人(しょにん)快楽(けらく)」という一文が出てきます。すべての国が協和しましょう。そうすればすべての人々は心身ともに安らぎを得ることができます、と説いています。


また『回向文』は、「願以(がんに)此(し)功徳(くどく)普及於(ふぎゅうお)一切(いっさい)我等(がとう)与(よ)衆生(しゅじょう)皆(かい)共成(ぐじょう)仏道(ぶつどう)」という文句です。つまり、お経を唱えたこの功徳が、地球上のすべての人々に行きわたり、みんなが一緒に素晴らしい道を歩んで行けますように、との願いの言葉です。


このように、仏教の主張は、お経を唱える目的は自分の為だけではなく、周りの人々さらには世界中の人々の幸せを願うことにあります。


最近、世界はナショナリズムの傾向が強くなっています。国民主義、国家主義、民族主義とも訳されます。愛国心は大切ですが、協調性がなければなりません。アメリカファースト、中国の南シナ海領有権問題、イギリスのブレグジット(EU離脱)はその典型で、世界中がナショナリズム化してきているように思われますが、日本も例外ではないような気がします。


新元号「令和」という言葉がさかんに飛び交っています。「令和は誰が考えたの?」「令和の出典は?」「令和の字は誰が書いたの?」「令和おじさん」「令和初めての…」等々大変な騒ぎになりました。平成に元号が変わった時のことを振り返ってみますと、こんな大騒ぎにはなってなかったと記憶しています。昭和天皇のご崩御の直後だったこともありますが、元号の出典、考案者、筆者などの話題は大きな話題にはなりませんでした。


元号で数えるのは分かりにくいので、西暦を使う方が今では一般的です。大方の新聞の日付も西暦で表示され、元号は小さくカッコのなかに収まっています。今なぜ元号が注目されるようになったのでしょうか?日本独特の暦であり、大切にするのは当然ですが、あまりにも騒々しく感じます。令和になった瞬間などはまるでお祭り騒ぎでした。これもナショナリズムの傾向が強くなってきたように感じられる現象です。


日本に根付いている仏教の精神はユニバーサリズムです。普遍主義と訳されますが、個別の違いより、それぞれに共通する事柄を尊重しようとする考え方です。今後仏教の精神が世界中に広まっていくことを望んでいます。


十輪院 住職 橋本純信

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