南都 十輪院 奈良市十輪院町27 TEL.0742-26-6635

こころの便り

120年の人生

平成30年6月10日

お釈迦様の弟子にアナン尊者という人がいました。静かな場所で座禅をしていると、鬼が現れて、「お前の命はあと三日しかない。今度生まれ変わると私のようにやせ細った醜い鬼になるぞ」と告げました。驚いたアナンはお釈迦様にそのことを申し上げると、お釈迦様は「鬼は食べ物がなくて苦しんでいるに違いない。お前に食べ物を求めているのだよ」と告げました。


アナンは苦しんでいる飢えた鬼たちに食べ物や飲み物を与えるためにお供え物をし、多くの僧を招いてお経を唱えてもらいました。そのおかげでアナンは120才まで長生きができたと伝えられています。


私たちが死後に趣く世界のひとつに飢え苦しむ餓鬼の世界があります。そのような世界に行かないためには生きているうちに餓鬼たちを供養してあげることが大切です。


実は餓鬼は我々の先祖です。助けるためには、お供え物をすることはもちろんですが、塔を建てることが大きな供養になると言われています。五輪塔や供養塔はそのためのものですが、五輪塔をかたどった板塔婆を用いるのが今では一般的です。そこに先祖の戒名を記し、多くの僧侶を招いて読経をお願いします。餓鬼を供養することは自身の長寿を願うことになります。


アナンが健康で長生きできた故事にちなんで行われているのが施餓鬼法要です。餓鬼は屋外にいるとされていますので外に向かって法要を行いますが、5人の仏さまの力をお借りします。


多宝如来(宝生如来)

餓鬼世界に落ち、苦しんでいる者を救ってくださる仏さま


妙色身如来(阿閦如来)

醜くなった姿を元通りにしてくださる仏さま


甘露王如来(阿弥陀如来)

心身の穢れを取り除いてくださる仏さま


広博身如来(大日如来)

飲食のありがたさを教えてくださる仏さま


離怖畏如来(釈迦如来)

恐怖におののく心を取り除いてくださる仏さま



以上、5人の如来さまの功徳を讃えることによって、私たちは先祖に護られ、幸せな人生を送くることができると思います。


十輪院 住職 橋本純信

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