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こころの便り

仏教界に激震

平成30年5月20日

奈良の仏教界に激震が走りました。いえ奈良だけでなく国内の仏教界、また多くの国民も驚いたことと思います。


薬師寺の管長(住職)が突然女性問題で管長職を辞任するだけでなく、寺を離れるという報道がなされました。スクープした週刊誌が出版される前々日のことです。


週刊誌の内容も確認せずに早々と辞任を表明したのは、強い責任感の表れか、自己に対する懺悔の気持ちがそうさせたのでしょうか?それとも周りの圧力に押されてからでしょうか?そういえば、20数年前に唐招提寺でも同じような問題が起こり、長老(住職)が辞任したことを思い出します。


昨今は、確実な証拠がなければ自分の非を認めない風潮が蔓延っています。一国の首相やその周りの人間がそのような態度なので、右にならえといった感じでしょうか?


東京大学をトップクラスで卒業し、大蔵省(今の財務省)に入省した佐川宣寿氏は証拠が出るまで嘘をつき続けました。人間としての自尊心が欠如しているのか、自身の出世の方が大事だったのか、どちらもあったように思えます。頭の教育はできても、心の教育はできていなかったのでしょう。今、このような現代人が増えているのではないでしょうか?こうしてみると、薬師寺の管長のとった態度は潔く感じます。新潟県知事もそうでした。


最近の一部マスコミはプライベートの問題をかなり踏み込んで大きく報道しています。自分たちは正義で、相手は犯罪者扱いのように捉えている感じもします。スクープした週刊誌は記者の名前を明かさず、映像ではインタビューアの姿もぼかしていました。


その記事で、記者は不邪淫戒を説く高僧が邪淫を犯したと強く管長の非を責めています。世間の言葉で言えば不倫をしたということでしょうが、不倫と不邪淫は全く別の内容です。
不邪淫戒は、仏教の出家者が守るべき五種、十種の戒律の中に含まれています。出家者は異性に触れるべきではないという戒で、つまり結婚などとんでもないことになります。しかし、日本の僧侶の多くは妻帯し、子供までありますから当然不邪淫戒を犯しているわけです。
不倫は人の倫を外れること、つまり道徳に反する行為で、民法の「不貞行為」にあたります。薬師寺管長の不貞行為は責められるべきことですが、余りにも鬼の首を取ったような表現の記事には閉口します。


十輪院 住職 橋本純信

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