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こころの便り

お彼岸って何?

平成24年3月21日

「お彼岸」や「お盆」という言葉が「墓参り」の代名詞のように聞こえます。日本人は昔から墓参りが好きな人種かも知れません。お盆は先祖供養の行事でありますが、お彼岸はそれが主な行事ではありません。


彼岸は彼方の岸つまり仏の世界を指しています。これに対して人間の世界を此方(こちら)の岸「此岸(しがん)」と呼んでいます。渡ることが容易ではないけれど、橋があればだれでも渡れることを川の両岸に譬えています。


一年のうち、春分の日と秋分の日には太陽が真東から昇り、真西に沈みます。東は薬師如来の住む瑠璃光浄土、西は阿弥陀如来の住む極楽浄土です。太陽は瑠璃光の輝かしい世界から極楽という平和な世界へと最短距離で進みます。この時川幅が最も狭くなり、仏の世界に近づき易いと考えられています。


仏の世界は死後の世界ではありません。人間界の煩悩の穢れがない理想郷が彼岸です。そこに至るにはいろんな橋(方法)がありますが、仏教は六種の橋を挙げています。

布施の橋 ― 金銭に拘らず、様々な方法で人を助けることによって渡れる橋。

戒律の橋 ― 自分自身を戒め、規則正しい生活によって渡れる橋。

忍耐の橋 ― 欲望を抑え、我慢することによって渡れる橋。

精進の橋 ― 何事にも努力することによって渡れる橋。

禅定の橋 ― 自分の心を見つめ直し、反省することによって渡れる橋。

智慧の橋 ― 正しい判断で物事に対処することによって渡れる橋。


これら六種の橋は今からでもすぐに渡れる橋です。決して死後に渡る橋ではありません。「お彼岸」とは春分、秋分の日を挟んで一週間、このような行為を勧める期間です。普段よりも楽にほとけ様のような人になれるはずです。


また「諸悪莫作(しょあくまくさ) 修善奉行(しゅぜんぶぎょう) 自浄其意(じじょうごい) 是諸仏教(ぜしょぶっきょう)」という言葉があります。


悪いことはせず、善い行いを為し、自らの心を清らかにするのが多くの仏が教えるところである、と言うのです。こんなことは当たり前のことで子供でも分かっていると人は言うでしょう。しかし、人生の達人とされる老人でも実行することは容易ではありません。


十輪院 住職 橋本純信

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