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こころの便り
2017/09/02
読経は幸せホルモン「セロトニン」を活性化させる

読経は先祖供養の時に唱えるもの、あるいは僧侶の専売特許脳のように思われていますが、読経の目的は自身の精神状態を安定させることにあります。お経の意味を把握することより、読経時の呼吸の仕方が重要なのです。大きく息を吸って、ゆっくり吐きながらお経を唱える。その呼吸の繰り返しが精神状態を整えてくれます。


難しいお経を唱えて何の意味があるのか。よくそんな疑問を耳にしますが、実は大切な意味があります。医学の発達により、特に脳細胞の研究によってそのメカニズムが解明されています。


私たちは様々な情報を内外から受けることによって脳内の神経細胞の間を脳内物質(神経伝達物質)が行き来し、体のいろいろな場所に指令が送られます。人の心も、これらの神経伝達物質のやり取りによってコントロールされています。


<脳内三大神経伝達物質と主な作用>
  • ドーパミン(生きる意欲を作るホルモン=意欲)
  • 意欲を起こし、モチベーションを高めます。よい結果に快感を感じます。
    例えば、試験の為に必死で勉強する時や、目標に向かって頑張る時に活性化します。
  • ノルアドレナリン(感情を支配するホルモン=集中力)
  • 怒りや危険に対して興奮させます。不安感、恐怖感を起こします。(アドレナリンは血管や筋肉など、身体への作用が強いですが、ノルアドレナリンは怒りやイライラなど脳や感情への作用が強い)
  • セロトニン(心身の安定をもたらすホルモン=共感力・切り替え力)
  • 心身の安定、心の安らぎをもたらします。

これらのホルモンは人間が人間らしく生きていく上で、無くてはならない物質です。しかし、出すぎるといろんな弊害を引き起こします。


ドーパミンが出すぎると、際限のない欲望に陥ったり、依存症を引き起こします。 ノルアドレナリンが出すぎると戦いをしたり、逃亡したり、更にはうつ病やパニック障害を引き起こします。セロトニンはドーパミンとノルアドレナリンのバランスを取り、快・不快を調節して平常心をもたらします。


読経の目的は精神安定にあると前述しましたが、私たちに備わっている煩悩の中でも根源的なものとして三毒が挙げられます。それら三毒は上記の三つのホルモンの多寡に影響を受けています。


<仏教の三毒と脳内三大神経伝達物質の関係>
  • 貪(貪欲)=ドーパミンの過剰
  • 瞋(怒り)=ノルアドレナリンの過剰
  • 痴(愚心)=セロトニンの不足

おへその下の丹田を意識した呼吸を続けることによって、セロトニンが分泌され、ドーパミンやノルアドレナリンの過剰分泌を抑制し、バランスを保ちます。


これらの三大神経伝達物質は脳の前頭前野という、つまりおでこのあたりの脳細胞が深く関わっています。特に呼吸法はその真ん中の眉間の奥の脳細胞(内側前頭前野)が関係しています。


そこはまさに仏教で大切な箇所とされる白毫(びゃくごう)といわれる所です。
仏さまの額には白毫が付いています。私たち僧侶は仏さまと向かい合って修法や読経をする時、仏さまの白毫と自分の見えない白毫の間でテレパシー(精神感応)を受けることになります。古来より重視されてきた読経や白毫の重要性が科学的に解明されたといえるのではないでしょうか?


現代はストレス社会と言われていますが、様々なストレスによって、脳内三大神経伝達物質のアンバランスが生じています。投薬や外界の環境を変えるのではなく、自身の内側から変えていくことが大切です。



十輪院 住職 橋本純信