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こころの便り
2017/01/01
伝統芸能化した寺院

あけましておめでとうございます。

東京商工リサーチによると、奈良県下で今年創業100年以上となる老舗企業は413社あるとされています。最古は平安時代末期の1184年創業の菊岡(奈良市 漢方薬小売り業)で、第2位は1573年創業の芳竹園(生駒市 茶せん製造)、第3位は1585年創業の本家菊屋(大和郡山市 菓子製造)と続いています。全体を見ると、奈良県は漢方薬・生薬関連、酒造関係の会社が多いのが特徴のようです。しかし、全国には老舗企業が3万3069社あり、奈良県は32位です。戦災に遭ってないのに意外な結果です。

最近は時代の変化が早く、老舗企業といえども倒産する会社が後を絶ちません。身の丈を知り、伝統と信用とともに時代に合わせた経営方針が必要とされます。
もちろんこれら企業の中には寺院は含まれてはいません。奈良には飛鳥時代からの古い寺もありますが、全国的には室町時代あたりから数多くの寺院が建立されました。400年くらいの歴史と伝統がありますが、いま多くの寺院が存続の危機にあるといわれていす。特に過疎地域の寺院は深刻です。

寺院や仏像は人々の信仰によって支えられて来ました。信仰があってこそ寺院運営が成り立ちます。伝統仏教を標語する寺院の多くは数百年の時代を信仰の力で乗り越えてきました。

しかし今や人口減少に加え、核家族化、大都市部への人口流入、そして菩提寺離れ、さらには宗教離れ、無信仰などの現状に直面し、寺院の将来には暗雲が立ち込めています。これからは消滅していく寺院が増えていきます。企業でいえば倒産です。人口減少は不可抗力かも知れませんが、時代に合わせた運営、つまり信仰心を呼び戻すような新しい方策が取られていないのが大きな原因といえます。
最近の若者には、寺と神社の区別がつきにくいようです。どちらも拝むところですが、ほとけ様と神様の違いがはっきり理解できないのでしょう。

寺院では伝統を守るあまり形式的になってしまい、表面的なことに重点が置かれ、信仰という内面的な部分への求心力を高める努力と適応性が不足しているのが現状といえます。大衆性がなくなり、多くの人々が無関心になりました。

伝統やしきたりを重んじることは大切ですが、存続の危機になっては元も子もありません。信仰心の薄らいだ人々の前では、僧侶の唱えるお経や所作は伝統芸能のようなものに見えてきます。信者は観客のような存在で、一体感がなく、距離をおいて眺めている状態のような気がします。特に、葬儀などでは葬儀社が主導的な立場で進行し、僧侶は役者になったような感があります。

しかし信仰心が無くなる時は人類も消滅する時かも知れません。信仰心は人類にのみ与えられた特性なのです。


十輪院 住職 橋本純信