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こころの便り
2016/08/05
施餓鬼と格差社会

「施餓鬼(せがき)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?最近は知らないという人が増えているように思います。施餓鬼法要はお盆の頃に各寺院で大々的に行われる非常に大切な行事です。しかし、年々参加者が減少している傾向にあります。世の中に格差社会が広がった原因の一つは施餓鬼の精神の欠如と言えます。

施餓鬼とは、「餓鬼に施しものをする」という意味です。六道(地獄世界・餓鬼世界・畜生世界・修羅世界・人間世界・天人世界)の世界の中で、餓鬼世界は常に飢えや渇きに苦しんでいる状態にあります。私たちは死後に六道世界に生まれ変わるとされていますので、六道を輪廻転生すると表現されています。

自分の先祖が餓鬼世界で苦しんでいるかも知れません。様々なお供え物をして餓鬼の世界から救い出さねばなりません。それと共に大切とされるのが、無縁の諸霊の救済です。

餓鬼の世界は何も次の世のことだけを言っているのではありません。現実世界にも餓鬼の世界が存在しています。世界には飢えに苦しむ人たちが大勢います。国内でも餓死する人がいます。餓死まで至らなくても生活苦で困窮している人が増えているのが現状です。またそれが原因で自殺に追い込まれる人も毎年かなりの数を維持しています。

施餓鬼法要は、私たちは自分のことだけを考えるのではなく、まわりの人たちと共に生きている、あるいは助け合って生きていることを実感させてくれる法要です。困っている人たちに救いの手を差し伸べることの大切さを教えてくれます。この精神が欠如すると社会格差はどんどん広がっていくことでしょう。

修行僧は、毎度の食事の前、自分の限られたご飯の一部を餓鬼のために取り置きます。施しの精神を常に身に着けるための行です。

施餓鬼法要はお経の中の次のような一節を典拠としています。釈迦の弟子、阿難尊者が瞑想中に餓鬼が現れ、お前は三日後に死んで餓鬼の世界に落ちるだろうと言われました。その餓鬼にどうすれば助かるのか聞いたところ、多数の餓鬼に施し物をすれば助けてやるといわれ、早速様々な食べ物や飲み物を施すと阿難は長寿が得られたのでした。


十輪院 住職 橋本純信