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こころの便り
2016/04/05
悲しみのない看取り

「みとりびと」というDVDを見ました。わずか15分くらいの物語ですが、実話に基づいています。人の死は悲しいもの、特に家族の死は辛く、追慕の念がつのります。しかし、必ずしもそうでない場合もあります。この物語はそこにスポットを当てています。


ある山深い山村の集落に老夫婦が暮らしていました。おじいさんは96才、おばあさんは92才。おじいさんはひ孫が学校の帰りによってその日の様子を聞くのを唯一の楽しみにしていました。おばあさんは庭の畑仕事が日課で作物の成長を見るのが生き甲斐でもありました。


ある日、おばあさんは庭でころんで足を悪くし、寝込む状態になりました。おじいさんは慣れない畑仕事を引き継ぎながらおばあさんの介護を続けていました。しかし、おばあさんの容体は芳しくなく、日に日に弱っていきました。子供、孫、ひ孫がやって来て手伝ってくれます。また医者、看護師、ケアマネジャーたちがチームを組んで毎日のように様子を見にきます。しかし夜はほとんどおじいさんが世話をしています。


おばあさんの容体は悪くなる一方です。おじいさんも疲れが溜まって来ました。医者は入院を勧めますが受け入れません。看病をしているこの時が人生で一番充実した生活を送っているとおじいさんは答えます。おばあさんが最期を迎えるまで頑張るというのです。


危篤状態になり、子供たちの家族が集まって来ました。幼いひ孫がおばあさんの手を握り、顔を撫で、声を掛けます。周りの家族は泣いています。しかし、どこかに悲しみだけでない、何かを感じています。


臨終を迎え、悲しみの時間が過ぎると、みんなは笑顔になりました。看病で充実した人生を送ることができたおじいさん、ひ孫を見ていのちのバトンリレーというものを感じた家族。そこには、「ありがとうおばあちゃん」ということばがありました。死は必ずしも悲しみだけでなく、生きることの意味も教えてくれます。そして感謝の気持ちと。


十輪院 住職 橋本純信