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こころの便り
2015/02/01
三千大千世界

仏教の世界観あるいは宇宙観は実に壮大です。
孫悟空がキント雲に乗って、はるか遠くにあった柱に自分の名前を書いて、それを得意そうにお釈迦様に報告をしたが、その柱はお釈迦様の指だった、という有名な物語があります。キント雲は秒速6万キロメートルのスピードが出るといわれています。あっという間に宇宙の彼方までいくことができますが、そこはお釈迦様の手の届く世界の中だったのです。

大きな岩を3年に一度舞い降りてくる天女が羽衣で撫でて、岩が擦り減って完全に無くなるまでの時間を一劫といいます。落語に出てくる五劫の擦り切れとは、一劫の5倍の長さの時間ですから、かなり大きな岩だったのでしょう。今も日常的に使われている億劫や永劫という表現もそれに由来しています。

数の単位もまた壮大です。恒河沙(ごうがしゃ)は10の52乗、阿僧祇(あそうぎ)は10の56乗、那由他(なゆた)は10の60乗といわれます。恒河沙はガンジス川の砂の数という意味です。究極は不可思議(ふかしぎ)という単位で、表現できないほどの数値を表しています。10の64乗ともいわれています。

5世紀に、ヴァスバンドゥという僧が『倶舎論(くしゃろん)』というお経の中で、仏教の宇宙観を具体的に書き表しています。天体望遠鏡などない時代に、地動説を思わせる宇宙を描き出しました。それに依りますと、この世界は、須弥山(しゅみせん)という山を中心にして、その周りを九山八海が同心円状に取り囲んでいます。四方に四大洲があり、その中の瞻部洲(せんぶしゅう)という島のような所に私たちは住んでいます。

太陽と月が巡り、須弥山の高さは56万キロメートル、海の直径は最大842万キロメートル。地下は1900万キロメートルに及びます。このような世界が宇宙に浮かんでいます。今風にいえば、太陽系の宇宙といえます。

さらには、太陽系の世界が1000個集まった世界を小千世界、小千世界が1000個集まった世界を中千世界、中千世界が1000集まった世界を大千世界と呼び、太陽系のような世界が10億個あるといわれています。これを総称して「三千大千世界」と呼んでいます。また、この「三千大千世界」が一仏の教化する範囲で、これを一仏国土と称しています。

何とも途方もない世界観、宇宙観です。仏さまの世界の壮大さをインド人特有のスケールの大きさで描き出しています。しかし、大きければ大きいほど偉大な感じがします。私たちは仏さまの世界の中では、目には見えないような小さな存在のようです。

十輪院 住職 橋本純信