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こころの便り
2012/11/24
煩悩即菩提


来年は昭和19年に亡くなった方々の七十回忌にあたります。当山の過去帳は亡くなった順に戒名が日付や俗名と共に記入されています。通常なら整然と記されている過去帳が、この年のページには行間に多くの戒名が所狭しと追記されています。後で判明した戦死者の方々の戒名です。多くは20代の青年で、戒名には「義」「勇」「烈」「猛」「忠」「武」「勲」「功」「殉」といった文字がよく使われ、ほとんどに院号が付されています。日本国の為に命をかけて戦ったことに報いる気持ちがよく表されています。

 

しかし、この戒名や喪主である親の名前を見ていますと、心が重くなってきます。当時の悲惨さは今思う以上に大変な状況にあったと想像されます。こんなことはあってはならないとつくづく思います。また戦死者の戒名に混ざって子供の戒名も目立ちます。戦況が悪化し、医薬品が不足していたのでしょうか。助かるはずの命も幼くして葬られてしまいました。

 

結果、私たちは戦争を放棄し平和国家の実現に向けて努力してきました。しかし世界のあちこちでは戦争が絶えず、我が国もまた軍備増強の一途にあります。戦争は結果的には人間の欲望によるものです。私たちは欲望を断ち切ることはできません。また欲望には際限はありませんが、少しでも小さくすることは出来るはずです。

 

仏教では人間の欲望を五つに分けて五欲と呼んでいます。食欲、睡眠欲、性欲、財産欲、名誉欲の五つです。これらの欲は人間にとって必要不可欠なもののはずですが、問題はそれらの欲をいかにうまくコントロールすることが出来るかどうかです。

 

仏教は五欲を完全に否定はしていません。欲は煩悩でもありますが、うまく使えば悟りへの手段となります。欲をコントロールしてくれるのが仏教と言えます。

 

仏教の基本は戒律を守ることと、懺悔をすることです。日常の生活の中でいつでも、思い出した時に実践することが大切です。それによって心豊かな人生を送ることができると思います。


十輪院 住職 橋本純信