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こころの便り
2011/11/01
ほとけごころとおにごころ

10月13日、中国広東省の仏山市という所で、2才の女の子がワゴン車に轢かれる痛ましい事故が起きました。このニュースは世界中に伝えられ、大きな反響を引き起こしました。

 

事故の一部終始は現場の防犯カメラに映っていました。商店が並ぶ道路で女の子はワゴン車に轢かれたあと、18人もの人がその横を通りましたが、まるで犬か猫が死んでいるかのように女の子には目もくれず、助けようともせず通り過ぎました。さらにトラックが来て踏んづけて行きました。ようやく一人の女性が駆け付け、抱き起こして救急車を呼んだということです。結局女の子は病院で亡くなりました。

 

中国の人身事故といえば、去る7月に浙江省で起きた新幹線事故が生々しく蘇って来ます。生存者の確認もろくにしないで車両を地中に埋めようとしたことが世界中の非難を受けました。またかと思うような事故です。中国ではチベットなどの異民族に対する人権弾圧も問題になっています。これは一国だけの特異なケースではありません。

 

中国に限らず、人類の歴史では世界中で数多くの残虐な戦争や弾圧が繰り返されて来ました。今現在も終わることを知りません。しかし、それらの行為は敵対関係あるいは利害関係によって引き起こされるものです。新幹線事故後の処理も当局の責任軽減を計ってのことです。ところが今回の女の子の事故はちょっと様相が違います。

 

なぜ何の敵対関係もない瀕死の状態の、しかもあどけない子供を助けようとしなかったのでしょうか。経済発展の末の道徳心の欠如、人口が多すぎる故の人命軽視など、中国の様々な状況がそうさせているという論評があります。しかし状況がどうであれ、この事故は人間にはそのようなこころが存在するということを教えてくれました。

 

人間は慈しみ深いこころも持っていれば、鬼畜にも劣るこころをも持ち合わせているということです。動物は危害を加える相手以外を攻撃しようとはしません。また生きて行く上で必要なもの以外を食べようとはしません。本能的にこどもを助けようともします。人間ほど高等な動物はいませんが、人間ほど低劣な動物もいないということを、私たちは自覚しなければなりません。

 

そのような自覚を促すために宗教が存在するのではないでしょうか?どんな宗教でも懺悔(ざんげ)を大切にします。ほとけごころを引き出し、おにごころを抑えることに日々努力することが必要です。どんなことでも目標を達成するには鍛錬すなわちトレーニングが大切なように、自身を見つめ直すトレーニングを行い、今日より明日の自分がより向上すれば素晴らしいと思います。

十輪院 住職 橋本純信