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こころの便り
2010/12/15
世界平和

平城遷都1300年祭ということで、今年の奈良は大変賑わいました。

当山でも10月から1ヶ月あまり不動明王(重文)を特別開扉したところ、実に大勢の参拝者がありました。普段よりもローソクをいっぱい灯し、また自由に焼香ができるようにして、今まさに法要が始まるといったような状況にしておきました。すると、まず手を合わせ拝んでから、仏様をじっくり拝観するといった人々の光景が多く見られました。普段の拝観者はただ仏像を観賞するという感じの人が多いですが、こちらが雰囲気作りをすると気持ちがこうも変わるものかと思いました。

 

また、朝の勤行に参加する人もありました。一緒にお経を唱え、そのあと少し話をすると、とてもいい経験ができたと喜んでくださる。日常生活の中では最近あまり経験しないことが、奈良に来てできたというのが、とても新鮮に思えたのではないでしょうか。

 

近頃は、自分は無宗教だとか不信心だとかを恥じることなく言う人が多くなっているようですが、日本人のこころの中には、まだまだ神仏を信じるDNAが残っているように思えます。日常生活の中でいつでも神仏を拝む機会や雰囲気を作ることが大切かもしれません。

 

今は世界中が不況に陥り、国家間の紛争が絶えず、また閉そく感が充満しています。 世界中の人々が共通して願うことは、平和な世の中の構築であるはずです。平和を得るためには、何が必要なのでしょうか? 今でもそれは、経済を発展させ、物質的な豊かさを得ることだと信じられています。

 

11月に相次いで行われました世界首脳会議がそれを物語っています。韓国ソウルで開かれた、「G20」という金融サミット。その直後に行われた、横浜市での「APEC」という経済会議。どちらも経済発展こそが世界を平和に導く最良の手段だという認識です。連日マスコミで大きく取り上げられ、経済回復を願う報道が目立ちました。

奇しくも時を同じくして、広島市では「ノーベル平和賞受賞者世界サミット」が行われていました。こちらはあまり目立たない報道でした。しかし、本当の平和の原点は広島にあると思います。世界の指導者は横浜に集まり、同じ日本の広島には行こうともしないし、見向きもしませんでした。このようなことでは、いつまでたっても世界に平和は訪れないような気がします。

 

チベットの宗教指導者ダライ・ラマは、世界平和は心の内なる平和から築かれなければ、それは実現しないと言っています。つまり、内的平和なくしては外的平和すなわち世界平和は達成できないと言うのです。

 

内的平和と言うのは、一人ひとりが怒りの気持ちや執着を減らし、こころの安らぎを感じることであります。このような精神状態を導くには、神仏の前で自分のこころを見つめなおすことが有効で、内的平和が人間の幸福、人間の満足感を生み出すのだと思います。

十輪院 住職 橋本純信