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こころの便り
お盆に想うこと
8月は旧盆の時期です。各地では様々なお盆の行事が繰り広げられます。祖先崇拝の一大イベントであるそれらの行事にはそれぞれに趣きがあり、その土地の風土、歴史、人間性がよく表現されています。

それだけに見ていても楽しいし、またその土地の人々はその行事を大切にし、いつまでも伝えていこうとします。

地域単位でなくても、家庭の中にあってもそれぞれの独自のお盆の祀り方があり、昔から言い伝えられて来たやり方で祖先を敬ってきました。

ところが近年、それぞれの家庭に昔から伝わるお盆の風習が消えつつあります。

これはどういうことでしょうか?

今までは親から子へ、子から孫へと伝えられていた祖先の祀り方がどこかで途切れてしまうのです。 原因は核家族生活にあります。その家に永年伝えられてきた風習が親子の住む所が別々であるために親から子に伝わらず、いつしか消えてしまいます。私はそのような現実のケースをいくつも見てきました。

親は子どもからは「祖先崇拝は親に任せておけばいい」と言われて嘆き、子どもは「親からは何も聞かなかった」と苦言を呈します。

昔からの習慣に固執し、忠実に守っていくことが正しいとは限りません。現代の生活様式に合うように祖先の祀り方も変わっていって当然です。

しかし、そのためには今まで伝えられてきた風習が持っていた意味合いを理解しておく必要があります。そうでないと今まで培われてきた先人の知恵が生かされないだけでなく、間違った習慣を生み出すことにもなりかねません。

最近、びっくりするような質問を受けることがよくあります。「塔婆ってなんですか?」「位牌ってどれですか?」「お盆っていつですか?」「お盆に何をしたらいいのですか?」 このような質問が親から仏壇を受け継いだ、そんなに若くない夫婦(複数)からありました。

別居生活のため、亡くなった親からは仏事に関して何も聞いていなかったのでしょう。由々しきことだと思います。

仏事だけではないでしょう。たとえば、料理、しつけなどにおいてもそれぞれの家庭の仕方、方法があり、それらは代々受け継がれてきたものです。

そこには経験則により非常に効率的に、合理的にそしてまた工夫が凝らされて、洗練されたものが残っているはずです。これらを途切れさせてしまうことは文化の消滅と言っても良いかも知れません。

私たちは先人の遺した生活の中の知恵、文化を知り、それらをいしずえに新しい知恵を、文化を産み出し、子孫に伝えていくことが大切だと思います。