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こころの便り
コクゾウムシ
突然ですが、コクゾウムシってみなさんご存知でしょうか?「穀象虫」と書きます。体長2~3ミリ、体は細くて黒褐色でおもに米を食べる虫です。

先月の法話にも書きましたが、京都・醍醐寺での修行僧時代、コクゾウムシの住み家となった究極の古古米を毎日食べていました。

このムシはお米の中に入り込んで内部を食べていきます。米の入った紙袋を開けると、おびただしい数のコクゾウムシと褐色の糞、それにクモの巣のようなものに連なった、ボロボロに砕けたお米が現れます。

そのお米を何度も水でといでムシのいなくなったのを確認して炊くのですが、出来上がったご飯はなんとも言えない臭いにおいがし、原形がなく糊のような状態です。でも、やはりいつも1匹か2匹のムシをご飯の中に見つけます。それでも毎日三度食べていると美味しくなってきますから不思議です。

修行僧はなぜこのようなものを食べるのでしょうか?それもわずかな量で。他には一采だけの食事で、動物性食物は一切摂りません。食べ物に対する有り難さ、感謝の気持ちを実感として味わう為でしょうか?

実はそれだけではありません。粗食は邪念を払い、また、ひもじさは精神を集中させる効果があります。修行僧が邪念を払い、瞑想や禅定に入る必要不可欠の手段であるのです。

妖怪漫画家の水木しげるさんも書物の中で、「満腹な状態の人間はあの世を感知する能力が衰えているようなのだ。飯を十二分に食ってると、老化やクソをするほうへばかり血が行ってしまって、霊感が鈍くなってしまうのだろう」といっています。

現代は飽食の時代です。美味しいものを食べた時の充実感、満足感は他の何物にも変え難いものがあります。人は多少の出費がかさんでも美味しいものを食べて、明日への鋭気を養おうとします。「グルメ」という言葉はすでに市民権を得たようです。

しかし一方、現代人は精神面の欠如がとやかく言われています。その原因のひとつにやはり飽食があるのでしょう。

動物性タンパク質を摂らないと体力が持たないとか、粗食ばかりしていると痩せて病気になるとか言われるかも知れませんが、私は菜食主義のプロレスラーを知っているし、かつてはスリムだった私自身、修行中に3キロ体重が増えたのも事実です。

今の食生活を変えるのは並大抵のことではありません。しかし、粗食の生活を少しの間でも続けてみるのも大切なことではないでしょうか?きっと素晴らしいひらめきが現れるでしょう。

修行生活最後の日に、米屋から買ったお米のご飯を食べさせて貰いました。いい香りがし、それにとても甘くておかずなどいらないと思いました。その味は今でも忘れません。