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こころの便り
よい言葉と悪い言葉
お釈迦様は人間の代表的な悪行を10種類あげておられますが、そのうちの4つが言葉に関する行為です。すなわち嘘をつくこと、悪い冗談、悪口、陰口です。

仏教には「愛語」という用語があります。人に優しい言葉をかけるという意味ですが、菩薩の4種の大切な行為のひとつです。またどんな財物よりも愛情のこもった言葉が素晴らしい布施となると、やはりお釈迦様は説かれています。このように仏教では言葉は非情に重要視されています。

言葉はその使い方によって人を喜ばせ、愉快にさせ、将来に希望を持たせることも、また反対に人を悲しませ、苦しめ、深い失望のどん底に追いやることもできます。言葉には不思議な力があって、その使い方によっては更に人を生かすことも殺すことも、また病人を癒すことも病人を作ることもできます。

子供に対しては長所を誉めてやることが立派に成長させることにつながります。欠点ばかり見つけて叱っていては自信を喪失してしまうでしょう。深い悲しみに落ち込んでいる人にとっては思いやりのある、暖かい言葉は何よりも力強い励ましです。

日常の何気ない「ありがとう」「ご苦労さま」「すみません」といった片言隻語が人の心を大きく動かし人を幸せにします。

しかし私たちは言葉というものを案外いいかげんに使っている場合が少なくありません。自分の気づかないあいだに相手を深く傷つることがあります。喜ばそうと思って言った言葉が反対に怒らせたということもあります。これらは自分に悪気があって言った言葉ではないので後で誤解を解くこともできます。

でも嘘や悪口はいけません。剣で受けた傷は治ればその痛さは忘れますが、言葉で受けた傷はなかなか治りません。時にはその痛手は一生あるいは子孫の代まで続くこともあるというくらいです。

悪い言葉は相手を傷つけるだけでなく、自分をも不幸にします。聞く方も不愉快ですが言う方も気持ちのいいものではありません。悪口をただけばその時はスッとするでしょうがいずれは自分に帰ってきます。

お釈迦様のところへある人が来て罵詈罵倒の言葉を浴びせました。お釈迦様はじっと聞いておられましたが、その者が言い終わると、「あなたはもし品物を人に送るとき、その人が受け取らないならどうしますか?」と尋ねられました。その者は「持って帰るほかはない」と答えました。するとお釈迦様は笑顔で「今あなたは私を大変罵って悪口を言いましたが、私はこれを受け取らないので、その悪口は全部あなたの物だから持って帰りなさい」と仰せられました。